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産女の里奇譚V


まじなか少年にとって楽しい筈のキャンプが、俄かに、一変してしまった。
まだ、明るいうちは良かった。然し、やがて、夕闇があたりを包み込み、そして、夜がやって来る…。

産女とともにやって来る…。

やがて、消灯。

まじなか少年は、此の地名の由来を考えずにはいられなかった。時折、外から鵺であろうか、不気味な声が聞こえる。『寝よう。眠るんだ』まじなか少年は懸命に自分自身に言い聞かせた。

然し、想いとは裏腹に、幼い神経は脅かされるばかりであった。

『何を騒いでいるんだ!』
巡回の担任の声。其れに呼応して委員長の女の子が斯う謂った。

『まじなか君が泣き出してしまって…。煩くて眠れません。何とかしてください!』

兎角にガキは残酷だ。

クラスで一番勉強が出来る。そんな自負のある少年が人前で泣けるものではない。

担任の先生の登場が、今少し遅ければ、まじなかはキャンプ中に寝具を水浸しにした男という十字架を、一生背負って生きていかねばならなかったであろう…。

斯くして、まじなかは一人。先生部屋で寝ることとなった…。