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産女の里奇譚エピローグ

ひとつ奇妙な事がある。

家に帰り着いた後に、何の気なく次男に尋ねた。
『そういえば、おまえ何で境内に入って来なかったんだ?』
『パパの後から、赤ん坊を抱いた女の人が入っていったんだよ。其の人が何か怖かったんだよ。』


ぞわわーーー。


あの時、確かにまじなか以外は、無人の境内だった筈だ。猫の額ほどの境内である。余人が居らば自ずと知れる。まじなかは全身に水を浴びせられた思いであった。


やめろぉー。まんま、岡本綺堂※じゃねーか。夜に、トイレに行けなくなるじゃねーか。蛤女房したら如何する?今夜トイレに行きたくなったら、お前を起こすからな。

次男によれば、件の女性は産女ではないと謂う。
現代風の抱っこ紐を使っていた事、ウィキの画像のようななりをしていなかった事等を、根拠として挙げている。

根拠としては、気休めにすらならぬ程、脆弱である。

あれから、半年。
あの時、次男が見たものは何だったのか、未だに判らない。
恐らくは、永久に知れる事は無いであろう。
然しながら、とりあえず、まじなかは息災である。

2015.06.03


※岡本綺堂の怪談の中に全く同じオチの『木曽の旅人』という作品がある。
だが、此の話は其れをパクッた訳ではない。全くの実話である。

岡本綺堂(ウィキペディア)

先ほど、友人から電話があった。此の話のネタ元を教えろと謂う。
失礼な。実話だと謂っているのに…。
然し、友人たっての願いでもあるので、乞いを要れ、岡本綺堂の彼の作品のリンクだけは載せておく。

木曽の旅人…岡本綺堂